採用に力を入れている経営者や採用担当の方であれば、「採用コストがかかりすぎている」「採用コストを削減しつつ、優秀な人材を採用したい」ということは常に考えられているでしょう。
この記事では、採用コストを削減するコツや注意点について詳しく解説していきます。
目次
人材の採用にはどれくらいのコストがかかる?
まずは、人材の採用にかかるコストについて見ていきましょう。
新卒採用の平均コスト
就職みらい研究所「就職白書2020」によると、新卒採用の平均コストは、2019年時点で1人あたり93.6万円です。
採用コストは有効求人倍率と比例します。2023年現在、コロナ禍から回復しつつあることから、新卒の有効求人倍率はゆるやかに上昇しています。それに伴い、今後新卒採用コストも緩やかに上昇していくことが予想されます。
新卒採用のコストで大きな割合を占めるのは以下のようなコストです。
- 採用サービスの利用料
- 説明会等の運営費
- 採用ページ制作費
新卒入社の社員は当然ポテンシャルでの採用となり、会社に貢献ができるようになるまでに一定の時間や教育コストを要します。それも踏まえると、新卒採用のコストはできるだけ抑えたいところです。
一方で、新卒採用の対象となる学生は、中途採用の対象となる社会人よりも、就職活動のための時間が十分にあり、基本的には複数社との比較をして入社先を決めます。そのため、採用する側としては他社との比較に負けないためにも、候補者のフォローをしっかりとする必要があり、その意味でも人件費を含めた採用コストがかかりがちな点は覚悟しておいた方が良いでしょう。
中途社員の採用コスト
就職みらい研究所「就職白書2020」によると、中途採用の平均コストは、2019年時点で1人あたり103.3万円です。
中途採用には、新卒採用よりも高額なコストがかかります。なぜなら、中途採用では、新卒採用と比べて条件が厳しく、対象者が絞られるためです。
基本的には、採用コストは求職者と求人企業の需給バランスで決まります。求めるスキルや人物像へのこだわりが強い場合、候補者の供給が限られることになるので、採用コストは高額になります。さらに、採用にかかる時間も長くなり、それによる見えないコスト増もあるので、注意しましょう。
アルバイト採用の平均コスト
アルバイト採用にかかるコストは、1人あたり1万円から5万円前後と言われています。
参考:株式会社ビースタイルメディア「パート・アルバイトの採用活動実態調査」
上記の新卒や中途といった正社員採用のコストと比較すると、アルバイトの採用コストはかなり低い金額です。それでも、アルバイトの採用コストも例に漏れず、少子高齢化の影響うけ、少しずつ採用単価が高くなっています。
アルバイトの種類によっても採用コストは異なります。
採用コストが低い職種
例えば、以下の職種は求職者からの人気が高く、採用コストが低い傾向にあります。
- 飲食店
- アパレル
- 単純作業
採用コストが高い職種
一方、下記のような職種は、専門性が求められる、労働環境が厳しいなどの理由で候補者が限られるため、採用コストが高くなりやすくなっています。
- 介護
- 看護
- 警備
採用コストを構成する内部コストと外部コスト
採用コストには、下記の2つに大別されます。
- 内部コスト
- 外部コスト
以下、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
内部コスト
内部コストは、下記のように採用にあたって発生する自社社員の人件費や、候補者対応に係る経費のことを指します。
- 面接官、採用担当者の人件費
- 応募者、内定者の交通費
- 内定者懇親会などの会食費
特に、面接官や採用担当者の人件費が大部分を占めます。
外部コスト
外部コストというのは、下記のように社外の採用サービスなどに支払うコストのことを指します。
- 求人広告費
- セミナー会場費
- 人材紹介会社への手数料
- 求人サービスの利用料
一般的に、外部コストは金額が明確でわかりやすいため、外部コストに目が行きがちです。一方の内部コストは、正確な工数の算出などが難しいことから曖昧になり、見逃されがちです。
採用コストの削減にあたっては、わかりやすい外部コストの削減はもちろんですが、見逃されがちな内部コストにまで目を向けることが重要です。
採用コストを削減するためのステップ
では次に、採用コストを削減するためのステップについて詳しく見ていきましょう。
1:採用コスト・採用単価の全体像を把握する
採用コストを削減するためには、まず採用コストの全体像を把握する必要があります。
上述の通り外部コストは容易に把握ができますが、内部コストは人件費が含まれるため、工数管理をしていないと、どこまでを採用コストに含めるのか難しい部分があります。
厳密な工数管理は必ずしも必要ありませんが、どの活動にどれくらいの時間を使ったのかざっくりとでも把握できるようにしておきましょう。それにより、以下のステップが行いやすくなります。
2:採用コストを採用人数と採用単価に分解する
採用コストは以下の通り「採用人数」と「採用単価」に分解することができます。
このようにすると分かる通り、採用コストを下げる上で一番確実な方法は、採用人数を減らすことです。不必要な採用を減らせば、自ずと採用コストは下がるので、まずは本当にその人数を採用する必要があるのかをよく考えるようにしましょう。
採用人数を減らす余地がないのだとすると、一人当たりの採用単価を下げる必要があります。
3:採用単価をチャネル別・採用ポジション別などで確認する
採用単価の削減を考える際には
- チャネル(採用経路)別
- 採用ポジション別
などに分解して採用単価を見てみることで、テコ入れすべきポイントが見つけやすくなります。以下は採用チャネル別に採用コストを分解した例です。
例えば、他の採用チャネルと比べて、採用単価がわるいチャネルがわかれば、そのチャネルからの採用を止めることで全体の採用単価を下げることができます。
ポジション別に分解をする場合も同じです。採用コストがかかりすぎているポジションがあれば、そのポジションの条件を見直すなどで、採用単価を下げることができれば、全体の採用コスト削減につながります。
このように、各チャネルやポジション別に採用単価を算出して比較する際に注意すべき点は、外部コストだけでなく、内部コストも考慮する必要があるという点です。
例えば、人材紹介会社経由の採用は、成果報酬費用が年収の20〜30%程度かかるため外部コストだけを見ると高額に見えますが、候補者対応を代行してもらえるため採用担当者の人件費など内部コストを抑えることが可能です。逆に、利用料が安いスカウトツールがあったとしても、採用担当のスカウト業務の人件費を考慮すると実は割高ということもあるので、注意しましょう。
採用コストを削減するためのコツ
では次に、採用コストを削減するためのより具体的なアプローチについて説明していきます。
「何をどうすれば採用コストを抑えられるのかわからない」と悩んでいる方は、是非参考にしてみてください。
コツ①:ミスマッチを早期に防止する
入社をしてからミスマッチが発覚し、すぐに離職をしてしまった場合、その社員にかかった採用コストが全て無駄になってしまいます。採用プロセスのできるだけ早い段階からミスマッチを減らすことで採用コストを大きく減らすことができます。
ミスマッチを早期に防ぐためには、まず条件や求める人物像を明確にし、経営陣や現場担当者と認識を合わせることが重要です。採用担当者は応募を増やすために、耳あたりのいい条件を記載したくなるものですが、現実とかけ離れた見せ方をしてしまうと、ミスマッチが増えて採用コストが増えてしまうので注意が必要です。
また、候補者が本当に活躍できるかどうかは、実際に働いてみないとわからないというのも事実でしょう。それを確かめるための手法として
- インターン
- 試用期間の設定
- 業務委託(副業)からの採用
といった手法も活用すると良いでしょう。
エニィクルーでは「副業からの転職実態調査」と題し、副業先企業への転職をした方へのアンケート調査を実施しました。採用に携わる方は是非以下よりダウンロードをして詳細をご覧ください
- 転職前の副業は入社後の満足度向上につながる。
- I副業の活用で転職潜在層へのリーチが可能
- 副業に期待すべきは態度変容より、接点の構築
- 採用のためには副業期間中のコミュニケーションが重要
コツ②:求人広告媒体を見直す
求人関連サービスには多くの種類があります。求人広告媒体を見直す時には、下記の項目をチェックすることが大切です。
- 求人広告媒体の費用対効果(採用単価や応募単価など)
- 自社が求める人材が得られるか
特に重要なのが、自社が求める人材が得られるかどうかです。
求人広告媒体の効果を測定する時に、どれだけ効率的に応募者を集められるかはもちろん大切です。しかし、いくら応募者を集めても、自社に適さない人材ばかりでは意味がありません。
最終的に入社した人がどの求人広告媒体を利用していたか分析すると「求人広告媒体の質」を見極める助けになります。
ちなみに、求人広告媒体を見直す時には、スカウト型の求人サイトを活用してみるのもおすすめです。売り手市場が続く現在、求人の応募を待つだけでは十分な応募者を集められないケースが増えています。そのような場合は、スカウト型求人サービスを用いて、転職潜在層も含めた掘り起こしをする必要があります。
コツ③:自社サイトでの採用を強化する
自社サイトでの採用を強化することによって、広告媒体などにかける外部コストの削減が見込めます。
自社サイトでの採用を強化するにあたり、見るべき指標は以下の2つです。
- 採用サイトのPV
- 採用サイトのCVR(採用ページのPV÷採用ページ経由での応募者数)
採用ページのPVを増やす
このうち、採用ページのPVは、企業の認知度を上げることで増やすことができますが、それは一朝一夕にはできることではありません。
短期間で採用ページのPVを増やすための有力な方法は、下記のような求人掲載サービスや運用型広告の活用です。
サービス | 料金 |
Indeed | 無料 |
スタンバイ | 無料 |
求人ボックス | 無料 |
CAREERJET | 無料 |
Google広告 | 有料 |
Yahoo!広告 | 有料 |
Facebook広告 | 有料 |
採用サイトのCVRを上げる
採用サイトのCVRを上げるためには、採用サイトを魅力的にする必要があります。
しっかりした採用サイトを作るには制作・開発コストがかかりますので、自社が求める採用規模を考慮したときに、どこまでのコストをかけるべきか、よく考える必要があります。
最低限、求人内容を魅力的かつ明確にしておくことでCVRを高めることも可能です。
コツ④:SNSを活用する
近年では、SNSを活用した採用活動も増えています。
「SNSはプライベートで利用するツールだ」
という認識を持っている方も多いと思いますが、TwitterやInstagram、FacebookやTikTokなどのSNSを企業の採用活動に活用する企業も増えています。
具体的には、以下のような方法で、特にSNSでのアクティブ度が高い若年層にアプローチする企業が増えているようです。
- SNSを使った自社ブランディングや認知拡大
- DM機能を使った候補者のスカウト
SNSは基本的には無料で活用できるので、うまく活用すれば採用コストを大きく下げることができます。一方で、SNSで露出を増やすためには、一定の工数が求められるため、結果としてコストが膨らむ可能性がある点は注意が必要です。
コツ⑤:リファラル採用を増やす
採用コストを削減するにあたって、ぜひとも検討したいのがリファラル採用です。リファラル採用は社員に自社に適した人材を紹介してもらう採用手法です。
社員が紹介してくれるため外部コストが低くなり、ミスマッチも少なくなります。知り合いが社内にいてフォローしてくれるため、定着率も高い傾向にあります。
リファラル採用はすぐに人材が欲しい場合は向きませんが、長期的に考えるとぜひ取り入れたい採用手法と言えます。
コツ⑥:選考プロセスを見直す
採用コストを削減するためには、選考プロセスを見直すことが大切です。選考プロセスを効率化することで、採用の内部コストを下げられます。
選考プロセスを見直す際は、下記の要素に注目すると良いでしょう。
- 面接の回数は適切か
- 評価基準は明確か
- より良い面接方法はないか
面接の回数を考える時には、「それぞれの面接を行う意義を合理的に説明できるか」を判断基準にすると良いでしょう。うまく意義を説明できない面接の場合には、なくしたほうが良いかもしれません。
また、面接での評価基準が不明確になっていると、通すべき人を落とし、通すべきでない人を次の選考段階に進めてしまいかねません。
面接方法についても、現在はオンライン面談が主流になりつつあります。
オンライン面談を活用することによって、交通費や会場費などを削減できますし、採用担当者の手間や負担も軽減できますので一石二鳥と言えます。
コツ⑦:フリーランスを活用する
フリーランスを活用することで、人件費を抑えながら高いスキルを持った人材に仕事を任せられます。
フリーランスは正社員と比べて福利厚生費や社会保険料などがかかりませんし、必要な時にだけ依頼することもできます。
ただし、フリーランスを採用する場合は、下記の点に注意する必要があります。
- 見極めが難しい(スキルや知識レベルにばらつきがある)
- 情報漏洩のリスクがある
フリーランスの採用には注意点もありますが、コストを削減したい時には有効な方法です。
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採用コストを削減する時の注意点
採用コストを削減する時に「徹底的に費用を抑えよう」と考えるのはおすすめできません。
費用を抑えることを重視するあまり、良い人材を採用できなくなってしまっては意味がありません。
PDCAを回して良い採用方法や求人広告媒体は残し、成果の出ないものはなくすことで、採用活動における費用対効果を高めることが重要です。
まとめ
人材採用には、少なからずコストがかかります。これ自体は仕方がないことですが、中には採用コストをかけすぎてしまっている企業もあります。
採用コストは、ちょっとした工夫や努力で大幅に削減できる場合があります。できるだけコストを抑えて採用活動を行いたいと考えている方は、今回紹介したことを参考にしながら、採用コストの見直しと改善を行ってみてください。