
副業においても、一定の条件を満たす場合は確定申告を行い所得税をおさめなくてはいけません。その際に副業にかかった費用は経費として正しく申告することで所得税を減らすことができます。
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ただし副業の種類や費用の種類によって経費として申告できるものとそうでないものがあるので、条件をしっかりと確認して、節税対策を講じていきましょう。
目次

副業にかかった経費は必ず記録する
まず大前提として副業にかかった経費はすべて記録を残しておくようにしましょう。
確定申告において、経費として申告するには支出の内容を示す請求書や領収書などの証拠書類の保管が必要となります。これらの書類は確定申告時に提出する必要はありませんが、税務調査の対象となります。この調査では過去3~5年の対象となるほか、所得税の徴収の時効が7年であることから領収書など確定申告書を作成する際の書類は最長7年間保管しておく必要があります。
それらを普段から取りまとめ、記録しておくことで確定申告直前に慌てて準備をするということもなく、申告漏れの防止にも役立ちます。
また、「いつ」「どこで」「何のために」「いくら使ったのか」など、経費を記録することは収支管理にも役立ちますので、発生した経費はすぐに記録をする習慣をつけましょう。
経費の申告が可能な所得の種類
経費を申告できるかどうかは所得の種類つまりどのような副業をしているかにもよります。以下の3種類については、経費を申告することが可能です。
所得の種類 | 内容 |
---|---|
事業所得 | 事業所得とは、小売業やサービス業、農業や漁業、自営業などで得た収入を指します。既出の不動産所得や山林所得は除かれますが、株式譲渡や先物取引などで得た収入も事業規模で行われている場合は事業所得に含まれます。 |
雑所得 | 利子所得、配当所得、不動産所得、山林所得、給与所得、事業所得、退職所得、譲渡所得、一時所得の9つの所得に該当しない所得が雑所得に分類されます。 |
不動産所得 | 不動産所得とは、マンションやアパートなどの貸家、駐車場などの貸地など賃貸で得られる収入のことを指します。 |
ご覧いただいて分かる通り、給与所得は含まれていません。アルバイトなどを副業としている場合の収入は給与所得となるため経費の申告が認められませんので注意が必要です。
経費として申告する際のポイント
次に多くの方が気にされているであろう、どのような費用を経費として申告することができるかについて説明します。
申告した費用が経費であると認められるか否かについては税務所の判断となりますが、以下の4つのポイントが基本となるのでおさえておきましょう。
事業(副業)に必要なものへの支払い
事業に必要なものへの支払いは経費として認められますが、プライベートなど事業に関係していないものへの支払いは経費として認められません。 例えば、事業に車を使用している人であればそのガソリン代などを経費として申告することが可能ですが、事業に車を全く使用していない人がガソリン代を経費として申告することはもちろんできません。
自身で支払いをしたもの
当たり前ではありますが、経費として申告できるのは自身で支払いをしたものだけです。取引先との打合せや会食などで、先方が支払ったものを自身の経費として申告することはできません。
1月から12月の間に『発生』したもの
また経費として申告できるのはその年の1-12月に『発生』したものです。注意すべきは『支払い』ではなく『発生』が基準になるということです。12月末時点で支払いが完了していなくても、商品を受領済みであったり、サービスを利用開始していれば経費として『発生』していることになるので、その年の経費として申告が可能になります。
領収書やレシートなど証拠となる書類が保管できているもの
保管する領収書やレシートなどの書類は「いつ」「どこで」「何のために」「いくら使ったのか」が記されている必要があります。領収書がもらえなかったり、失念していた場合でも出金伝票などにこれらを記しておくことで証拠書類として認められるので忘れずに実施しましょう。
経費として認められる費用の例
以下は経費として申告ができる費用の具体例です。
費用の種類 | 内容 |
---|---|
販売商品に関する費用 | 物販などの副業において、商品の発送費や商品保管のための倉庫賃料などは経費として認められます。 |
取引先に関する費用 | 取引先との会食などの接待費や香典、祝い金などは経費として認められます。 |
広告費 | チラシやインターネットへの掲載などの広告料は経費として認められます。 |
仕事に関する備品や道具 | 仕事で使用するパソコンや仕事机、カメラなどの備品や道具は経費として認められます。ただし10万円未満といった条件もあります。 |
通信費 | インターネット、仕事用の携帯代などの通信費は経費として認められます。 |
その他 | 文房具や仕事の情報収集のために必要な参考書や雑誌の購入費は経費として認められます。 |
また、不動産所得の場合には以下の費用も経費として認められます。
費用の種類 | 内容 |
---|---|
賃貸物件にかかる税金 | 不動産取得税や固定資産税など賃貸物件にかかる税金は経費として認められます。 |
賃貸物件の光熱費 | ガス代、水道代、電気代など賃貸物件にかかる光熱費は経費として認められます。 |
管理費 | 管理会社への管理手数料などは経費として認められます。 |
副業時には覚えておきたい家事按分
家事按分とは
家事按分とは生活と事業で兼用しているものにかかる費用のうち、事業で使用している金額を算出し一部経費として申告することができる制度です。
会社員で副業をされている人の中には、副業では専用のオフィスを持たず自宅で作業をしているという方も多いかと思います。このような自宅兼仕事場のような場合は家賃や光熱費を経費として申告することができるというものです。
このようなケースの場合、どのように生活費と経費とを区分したらよいのでしょうか。一般的には事業割合(仕事で使用している割合)をもとに計算をします。事業割合は、例えば以下のような方法で決めることができます。
- 地代家賃などの賃料は、仕事スペースとして使用している面積や事業時間の割合に基づき算出
- 水道光熱費(電気・ガス・水道)は、1日の業務時間の割合に基づき算出
- 自動車を自家用と仕事用で兼用している場合は、走行距離や事業で使用した日数に基づき算出
- インターネットの通信費は、事業で使用した日数やデータ利用量に基づき算出
このようにして決まった事業割合を、実際の支払金額にかけることで、仕事に使っている金額を算出し、その分を経費として計上します。
家事按分の注意点:家事按分は青色申告が前提!
ただし、家事按分が認められるのは確定申告を青色申告で行う場合のみです。そして、青色申告ができる所得は「事業所得」「山林所得」「不動産所得」のみと定められています。つまり、アルバイトなどの「給与所得」やフリマアプリのちょっとしたお小遣い稼ぎでの「雑所得」では青色申告を行うことはできず、家事按分を行うこともできませんので、要注意です。
さらに、所得税法では家事按分の区分方法が規定されていないため、各人が判断して区分する必要がある点にも注意が必要です。費用が業務にとって直接必要であるということを説明できるよう、合理的な基準を用いて生活費と明確に区分するようにしましょう。
副業における経費の取り扱い方(まとめ)
- 領収書など確定申告書を作成する際の書類は最長7年間保管しておく必要がある
- 経費を申告することができる所得は「事業所得」「雑所得」「不動産所得」
- アルバイトなど「給与所得」は経費の申告ができない
- 事業用と私用の兼用の場合、一部を経費として申告する「家事按分」という制度がある
- 家事按分の計算では「時間」「面積」「距離」などから事業割合を求める
経費の申告は副業において節税対策の柱にもなりますので、制度についてきちんと理解を深めておきましょう。