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「新規事業の立ち上げを任せられる人材が社内におらず、中途採用を試みても採用までに時間がかかりすぎる」
新規事業を進める多くの企業が、このような壁にぶつかります。人材の問題は、新規事業の阻害要因として長らく積み残されています。
本記事では、なぜ新規事業の人材確保がこれほど難しいのかという構造から、人材確保のための採用・育成・外部人材の3ルート、採用が間に合わないときの現実的な選択肢について解説します。ぜひ最後までご覧ください。
出典:中小企業庁「2017年版中小企業白書(第2部第3章)」
目次
1. 新規事業の人材確保が難しいのはなぜか
新規事業の人材確保が難しいのは、努力不足や予算不足の問題ではありません。構造的な3つの要因が重なっています。
新規事業の立ち上げ経験者は労働市場にごく少ない
採用活動をおこなっても「なかなか適切な人材が見つからない」と感じる場合、まず要因として挙げられるのが、新規事業の立ち上げ経験者は労働市場にもともと少ないという現実です。
既存事業を運営する人材は多く存在しますが、事業をゼロから立ち上げ、仮説検証を回しながら軌道に乗せた経験を持つ人材は限られています。さらに、そうした経験者の多くはスタートアップや大手企業の新規事業部門に在籍しており、転職市場に出てくる頻度は相対的に低くなります。
つまり、採用を強化しても母集団の絶対数が少ないという壁が最初に立ちはだかるのです。
既存事業に人材が偏り、社内から人を割けない
社内から新規事業チームへ異動させようとしても、大半の企業では既存事業の運営に優秀な人材が張りついており、すぐには動かせない状況です。
新規事業への異動は一般に既存事業側の反発を生みやすく、とくにマネージャー層は手放しを嫌がります。また、経営上の優先度から見ても、売上をすでに生んでいる既存事業への人材配置が短期的には正当化されがちです。結果として、新規事業担当に「なんとなく手が空いている人」を充てる、あるいは既存業務との兼務でしのぐケースが起きやすくなります。
公的データが示す「新規事業の最上位課題は人材不足」
この課題は個別企業の感覚にとどまりません。2017年版中小企業白書(野村総研2016年11月調査)が収録するデータでは、新事業展開を実施していない企業が挙げる最上位の課題は「必要な技術・ノウハウを持つ人材が不足している(43.8%)」でした。資金不足や市場の見通しが立たないといった課題を上回って、人材の問題が1位に挙がっています。
また、デジタル技術を活用した新規事業(DX関連)に取り組む場合には、別の壁も加わります。経済産業省が2019年に公表した「IT人材需給に関する調査」によれば、先端IT人材は高位シナリオで2030年に最大約79万人不足するとされており、DX型の新規事業では人材確保の難易度が今後さらに高くなることが示されています。
出典:中小企業庁「2017年版中小企業白書(第2部第3章)」
2. 新規事業に必要な人材・スキルとは
「新規事業の人材が不足している」とわかっていても、何を確保すればよいかが曖昧なまま採用・育成を動かしてしまうと、ミスマッチが起きやすくなります。まず「何を持った人材が必要か」を整理しておくことが、確保の方針を立てる前提になります。
仮説検証を回す力と推進力
新規事業に求められる中心的なスキルは、「正解のない状況で仮説を立て、すばやく検証して方向修正する力」です。既存事業では前例やマニュアルを参照できますが、新規事業では市場にまだ正解がないため、スピードと柔軟性が求められます。
また、社内の壁(予算承認・部署間調整・経営層への説得)を越えて事業を前に進める推進力も欠かせません。技術力や企画力があっても、社内で動かせなければ事業は止まってしまいます。
立ち上げ経験と社内外ネットワーク
過去に事業を立ち上げた経験があるかどうかは、採用・外部人材の選定において重要な判断軸の一つです。立ち上げ経験者は、事業フェーズごとに何をすべきかの感覚を持っており、初動でつまずくリスクが下がります。
加えて、顧客候補へのアクセス経路や、業界のパートナー候補とのネットワークを持っているかどうかも、新規事業の立ち上がりスピードに直結します。とくに初期営業や市場調査の局面では、ゼロからネットワークを作るより、既存のネットワークを活かせる人材の方が動きが速くなります。
「全部を1人で担える人」を探す必要はない
新規事業に必要なスキルを並べると、「そんな万能な人材はいない」と感じることも多いはずです。しかし、これは発想を転換できる余地でもあります。市場調査・事業企画・初期営業・プロダクト開発といった各フェーズで必要な専門性は異なります。すべてをカバーする一人を採ろうとするより、フェーズごとに必要な専門性を持つ複数の人材を、社内と外部の組み合わせで充てるほうが現実的です。
とくに、社内で固定費として抱えにくい専門性については、外部人材で補うという発想が選択肢に入ります。
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3. 人材を確保する3つのルートと向き・不向き
人材確保の手段は大きく「社内育成」「中途採用」「外部のプロ人材活用」の3つに分かれます。それぞれに異なる特性があり、新規事業のフェーズや自社状況によって適切な選択は変わります。
1. 社内で育成する
社内育成は、既存の社員に新規事業に必要なスキルを習得させるルートです。組織文化や既存事業への理解が深い人材を活かせる点と、育成にかかるコストが比較的抑えやすい点が強みです。
一方で、専門的なスキルと実践経験を積み上げるには相応の時間が必要です。新規事業のスピード感からすると、育成が軌道に乗るまでの期間が事業の立ち上がりタイミングとかみ合わないケースが多くあります。既存業務と並行しながら育成をおこなう場合は、どちらも中途半端になるリスクがあります。
2. 中途採用する
中途採用は、即戦力となる経験者を外部から獲得するルートです。立ち上げ経験や専門スキルを持つ人材を採れれば、事業の初速が上がる可能性があります。
ただし、採用活動の開始から実際に入社・稼働するまでには一定の期間がかかります。中途採用の場合、求職者の選考・内定・在職中の引き継ぎを経るため、一般には1〜2カ月、専門職・経営層など難易度が高い採用では3〜6カ月以上の期間を要するとされます。新規事業には「今すぐリソースが必要」という場面が多く、このリードタイムが事業の進捗と合わないことがあります。
また、採用した人材が事業フェーズに合わなかった場合に調整が難しくなる点も考慮が必要です。
3. 外部のプロ人材を活用する(業務委託・副業)
業務委託や副業という形で外部のプロ人材を活用するルートは、採用よりも短い期間で専門性を確保できる点が特徴です。固定費ではなく変動費として扱えるため、事業フェーズに合わせた柔軟な体制変更もしやすくなります。
市場調査・事業企画・初期営業など、フェーズごとに必要な専門性が変わる新規事業との親和性も高く、立ち上げ期の不確実性が高い段階で採用リスクを抱えずにリソースを確保できる手段として、近年選ばれる機会が増えています。
業務委託の具体的な進め方や費用相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
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4. 「兼務・片手間」で乗り切ろうとする落とし穴
人材の確保が難しいとき、最も手っ取り早い選択肢として「既存事業の担当者に兼務で任せる」という方法が浮かびます。しかし、この選択は多くの場合うまく機能しません。
なぜ兼務だと新規事業は進まないのか
兼務が失敗しやすい理由は、主に3つの構造的な問題から来ています。
1. 工数の問題
既存事業を担いながら新規事業を進めるには、日々の業務の合間に思考・意思決定・実行をおこなう必要があります。新規事業は「考える時間」と「動ける時間」の両方がまとまって必要な仕事です。断片的な時間でこなせる性質ではないため、兼務ではアウトプットの質と量が確保しにくくなります。
2. 優先順位の問題
既存事業には納期・数値目標・顧客対応などの「今すぐ応えなければならない」要求が常にあります。その一方で、新規事業の多くのタスクは緊急ではなく、重要度が高いにもかかわらず後回しにされやすい性質を持っています。結果として、新規事業の進捗は慢性的に遅れやすくなります。
3. コミットメントの問題
「新規事業も大事だが、既存事業のメンバーでもある」という立ち位置では、新規事業に対してフルコミットしにくい心理的な状態が生まれます。意思決定の速さ・課題への没入度・リスクをとる姿勢といった新規事業に必要な要素は、中途半端なコミットメント状況では育ちにくくなります。
専任を採るか、外部の専任リソースを充てるか
兼務の問題を解消するための現実的な選択肢は、「専任で動ける人材を確保する」ことです。その手段として、正社員の中途採用か、外部のプロ人材の活用が主な候補になります。
中途採用で専任担当を確保する方法は、社内での継続的な体制構築に向いています。ただし、採用完了まで一定の期間を要します。その期間に事業を前に進めたい場合や、特定のフェーズだけ専門性を集中投下したい場合には、業務委託で専任のプロ人材を充てる選択肢が有効です。
外部人材の場合でも、「週3日で新規事業に専念する」「市場調査フェーズだけ集中的に動く」といった関わり方を設計することで、兼務のような中途半端な状態を避けられます。どちらの手段を選ぶかは、事業フェーズの緊急度と、長期的な体制として社内に専任を置くことの優先度によって判断することになります。
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5. 採用が間に合わない・育てる時間がないときの現実解
採用を動かしていても完了まで時間がかかる、社内育成には数カ月単位の期間が必要、しかし事業は今すぐ動かしたい。そうした状況に直面したとき、外部のプロ人材が現実的な選択肢になります。
立ち上げスピードで見ると外部人材が有利
採用・育成と外部人材活用を「立ち上げまでの時間」という軸で比べると、差は明確です。
中途採用は一般に1〜2カ月の採用期間を経て入社となりますが、専門職・経営層クラスでは3〜6カ月以上になるとされます。さらに、入社後にオンボーディングの期間も加わります。育成の場合は、専門スキルの習得という観点では6カ月〜1年以上を視野に入れる必要があります。
これに対して、業務委託で外部のプロ人材を活用する場合は、候補者のマッチングから稼働開始まで数週間単位で動ける点が大きな違いです。
市場調査〜企画〜初期営業のどこを外部で埋めるか
外部人材を活用する際に検討したいのが、新規事業の「どのフェーズ・どの業務を外部に出すか」という切り分けです。
新規事業のプロセスは大きく「市場調査・仮説立案」「事業企画・プロダクト設計」「初期営業・PoC」といった段階に分かれます。これらをすべて社内でまかなう必要はなく、社内で意思決定できる体制を維持しながら、実行フェーズの専門的な作業を外部に任せるという構造を作ることも選択肢のひとつです。
たとえば、市場調査や競合分析、事業計画の骨格づくりは外部の専門人材が担い、社内の担当者はその成果を受けとって意思決定や社内調整に集中するという役割分担が考えられます。
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ノウハウを社内に残しながら進める
外部人材に任せると「ノウハウが社内に蓄積されない」という懸念は、新規事業担当者からよく聞かれます。この懸念は設計次第で解消できます。
業務委託の契約内容に「成果物の移転・共有」「実施プロセスのドキュメント化」「社内担当者との定期的な情報共有」を組み込めば、外部人材が動いた結果を社内に蓄積する仕組みを作れます。とくに準委任型の契約では、外部人材の知見を社内チームと共有しながら進める形が取りやすくなります。
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まとめ
新規事業の人材確保が難しいのは、立ち上げ経験者の絶対数が少なく、既存事業に人材が偏り、採用・育成には時間がかかるという構造的な事情が重なるためです。兼務・片手間で乗り切ろうとすると、工数・優先順位・コミットメントの面で事業はかえって止まりやすくなります。
とくに「今すぐ動かしたいのに担い手がいない」立ち上げ期には、採用や育成を待つより、短い期間で稼働できる外部のプロ人材が現実的な選択肢になります。すべてを一人の万能人材に求めず、フェーズごとに必要な専門性を社内と外部で組み合わせる発想に切り替えれば、確保のハードルは下がります。まずは外部人材で初動を作る選択肢から検討してみてください。
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