
「非常勤役員って正社員とどう違うの?報酬とか責任範囲も気になる…」
非常勤役員は、企業の経営に関与しつつも常勤ではない立場の役員を指します。
報酬水準の柔軟さや専門性の高さから注目される一方で、「責任の所在が不明確」「実態があいまい」など気になるポイントも多いでしょう。
そこで今回は「非常勤役員とは何か?常勤との違いやデメリット、報酬相場はどうなのか?」を徹底解説します。
本記事では、非常勤役員の役割や任命の流れまで解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
プロ人材をお探しなら!

Anycrewエージェントなら、経験豊富なフリーランス・副業人材をご紹介可能です。
-
Anycrewの特徴
- 最低発注期間や最低発注金額の制限はなし。柔軟な人材の登用が可能。
- アドバイスから実行まで貴社の課題に応じ人材を選定・紹介
- マーケティング、企画、事業開発、営業などビジネスサイドの人材が豊富
目次
非常勤役員・取締役とは?
非常勤役員とは、企業の取締役や監査役などの役職を持ちながら、常勤ではなく、特定の会議や重要な意思決定の場面でのみ業務に携わる役員を指します。
しかし、非常勤役員の役割や責任範囲は企業によって異なり、明確に定義されていない場合もあります。そのため、任命時には契約内容を十分に確認し、双方の期待や義務を明確にしておくことが重要です。
また、非常勤役員の報酬は、業界や企業の規模、役割の重要性などによって大きく異なります。一般的には、常勤役員の報酬と比較して低めに設定されることが多いですが、専門性や貢献度に応じて適切な報酬が支払われるべきでしょう。
非常勤取締役と社外取締役の違いは?
非常勤取締役と社外取締役は、企業の経営に関与する役職ですが、定義や役割には明確な違いがあります。
非常勤取締役とは、常勤ではない取締役を指し、会社法上の明確な定義は存在しません。一般的には、他に本業を持つ専門家や経営者の家族などが任命され、必要に応じて経営会議や特定のプロジェクトに参加し、専門知識を提供する役割を担います。日常的な業務には関与せず、柔軟な勤務形態が特徴です。
一方、社外取締役は会社法第2条第15号により明確に定義されており、当該会社やその子会社の業務執行取締役、執行役、支配人、その他の使用人でなく、かつ、過去10年間にこれらの役職に就いていなかった者を指します。つまり、会社の内部から独立した立場で経営に関与することが求められます。
社外取締役の主な役割は、企業の経営状況を客観的に把握し、経営上の意思決定や業務執行についての監督を行うことです。これにより、企業のコーポレートガバナンスを強化し、株主や利害関係者の信頼を得ることが期待されています。
なお、社外取締役は常勤である必要はなく、他社での役職を兼任する場合も多いため、実質的には非常勤であるケースが一般的です。しかし、非常勤取締役と社外取締役は異なる概念であり、混同しないよう注意が必要です。
非常勤役員・取締役を設置するデメリット

非常勤役員・取締役を設置するデメリット
非常勤役員や取締役を導入することで、コスト削減や専門知見の活用など数多くのメリットが得られます。
しかし、その一方で、非常勤という立場ならではの運用上の課題や組織内での摩擦が生じる可能性も否定できません。制度として取り入れる前に、こうしたデメリットを十分に理解し、あらかじめ対策を講じておくことが重要です。
なので、次に非常勤役員・取締役を設置するデメリットを詳しく解説します。
- 情報共有が不十分になりやすい
- 意思決定のスピードが遅くなる
- 責任の所在があいまいになりやすい
- 社内文化や現場状況を把握しにくい
- コミットメントが低くなる可能性がある
順番に見ていきましょう。
デメリット①:情報共有が不十分になりやすい
非常勤役員は、基本的に日常業務に常時関与しているわけではないため、社内の最新動向や重要な背景情報が伝わりにくくなる傾向があります。
迅速な市場対応や複数の部門をまたぐ意思決定が求められる場面では、情報の断絶が大きなボトルネックとなり得ます。実務上も、週次や月次で開催される取締役会への参加だけでは、現場の課題感や実態までは把握できないケースが多く、戦略的な判断にズレが生じる原因になります。
また、社内でのコミュニケーションがメールや報告書などの間接手段に依存することで、緊急性やニュアンスが十分に伝わらないこともあります。その結果、意図しないミスリードや連携ミスが発生し、かえって組織の意思統一を妨げる事態に発展する恐れもあるでしょう。
こうしたリスクを回避するためには、非常勤役員向けの専用情報共有システムや、社内レポートの定期配信など、制度面での補完が不可欠です。
デメリット②:意思決定のスピードが遅くなる
非常勤役員は、常勤役員のように日常的な現場判断や即時対応に携わる体制ではありません。
そのため、重要な経営判断が必要となる局面で、連絡や意見収集に時間がかかることで、意思決定全体のスピードが低下してしまう場合があります。
例えば、取引先との緊急な交渉や新規事業の立ち上げ時において、即座に取締役会の同意が必要な場面では、非常勤役員の都合により議論が後回しになるといった問題が起こり得ます。
特に複数企業に兼任している非常勤役員の場合、自社のスケジュールが優先されにくいこともあり、結果的に他の意思決定プロセスにまで悪影響を及ぼすこともあります。決定の遅れが商談の破談や競合他社への遅れにつながれば、ビジネスチャンスを逸する可能性も高まります。
こうしたリスクを軽減するためには、緊急時の対応ルールを明確にしたり、常勤役員に権限委譲を行うなどの内部調整が必要になるでしょう。
デメリット③:責任の所在があいまいになりやすい
非常勤役員は日常的な業務執行には深く関与しない一方で、法的には取締役としての責任を負う立場にあります。
このギャップによって、社内外から「どこまでが責任範囲なのか」が不明瞭になるという問題が起こりがちです。例えば、社内でトラブルや不祥事が発生した際に、「非常勤だから知らなかった」という言い訳が通じないケースもあり、逆に、情報を十分に得ていないにも関わらず責任だけを問われるという不公平な状況も生じ得ます。
また、企業内においても、非常勤役員への期待値が組織によって異なり、ある部署では形式的な存在として扱われ、別の部署では実務指導を期待されるといった不均衡が発生することもあります。
こうした状態が続くと、意思決定の際に「誰が最終的に責任を取るのか」が明確でなくなり、経営のリスク管理にも悪影響を与えることになります。
したがって、非常勤役員を導入する際には、契約書や役割分担表などによって責任の範囲と対応領域を明示的に定めておくことが不可欠です。
デメリット④:社内文化や現場状況を把握しにくい
非常勤役員は限られた時間で企業に関与する立場であるため、現場の温度感や従業員の実情まで把握するのが難しいという課題があります。
企業風土や暗黙のルールといった“見えにくい要素”は、書類や会議だけでは理解しにくく、結果として的外れな提案や判断に繋がることもあります。
また、従業員との直接的なコミュニケーションが少ないことで、信頼関係が構築されづらく、現場からの本音が吸い上げにくくなるという面もあります。
さらに、企業文化と合わない外部人材を非常勤役員に迎えてしまうと、むしろ内部の摩擦を生み、離職や士気低下の可能性も否定できません。
こうしたデメリットを軽減するためには、非常勤役員に対して定期的な現場視察や従業員との懇談機会を設けるなど、内部との接点を意識的に増やす工夫が必要と言えるでしょう。
デメリット⑤:コミットメントが低くなる可能性がある
非常勤という立場上、業務への関与が限定的であることから、役員としての責任感や当事者意識が希薄になりやすいデメリットもあります。
特に他社でも役職を兼任している場合、自社への関心や優先順位が低くなる傾向があり、緊急時や重要案件への対応が後回しにされる可能性があります。
また、報酬が比較的少額に抑えられている場合、モチベーションが上がらず、形式的な出席やコメントに終始するなど、実質的な貢献が得られないことも考えられます。
企業としては、非常勤役員であっても適切な役割や期待を明確に示し、定期的な評価やフィードバックの機会を設けることが大切です。
非常勤役員・取締役を設置するメリット

非常勤役員や取締役の設置は、企業の経営体制に柔軟性を持たせながら、外部知見を取り入れる手段として注目されています。
中小企業やスタートアップにおいては、人的資源が限られている中で、コストを抑えつつも経営レベルを高めることが大切。そのような状況下で非常勤役員を活用することは、経営効率の向上だけでなく、組織の信頼性を高める施策としても有効です。
次に、非常勤役員・取締役を設置することで得られるメリットを詳しく解説します。
- 経営コストを抑えられる
- 専門知識を持つ人材を柔軟に活用できる
- 外部の視点を経営に取り入れられる
- ガバナンス体制を強化できる
- 人材不足の補完ができる
順番に見ていきましょう。
メリット①:経営コストの削減
非常勤役員は常勤に比べて勤務時間が限定的であるため、報酬水準も抑えられる傾向にあります。
中小企業庁の調査によれば、常勤取締役の年収が平均で約1,200万円前後である一方、非常勤の取締役では年額100万円〜300万円程度に設定される例が多く見られます。
このように、高い専門性を持つ人材を比較的低コストで登用できる点は、特に財務に余裕のない企業にとって大きなメリットと言えるでしょう。
また、業務量に応じた柔軟な契約が可能であるため、必要最低限の関与に留めつつも経営に貢献してもらえる体制を構築できます。
結果として、人的リソースの効率的な配置が実現し、固定費の圧縮に繋がります。
メリット②:専門知識の活用
非常勤役員として外部から専門家を招くことにより、自社にはない知見や経験を経営判断に反映させることが可能になります。
例えば、弁護士や会計士、ITエンジニアといった特定分野のプロフェッショナルを登用すれば、法務・財務・システムなどの側面から企業を強化できます。
成長フェーズにある企業では、社内に十分な専門人材が揃っていないケースも多く、その穴を埋める手段として非常勤役員が機能します。日常業務に縛られないぶん、客観的かつ戦略的な意見が得られやすいのも大きなメリットです。
短期間で成果が求められる経営環境において、即戦力として期待できる点は大きな価値と言えるでしょう。
メリット③:外部視点の導入
非常勤役員は、企業の内情に過度に依存せず、あくまで第三者的な立場で経営に関与する点が特徴です。このため、既存の組織に染まらない客観的な意見や指摘を行える立場として重宝されます。
中小企業やファミリービジネスでは、経営判断が内輪で固まりがちな傾向があり、視野が狭くなることもあります。そのような場合、外部からの新鮮な視点が加わることで、見落としていた課題やリスクに気づくきっかけとなります。
また、株主や取引先に対しても、外部人材が経営に関与しているという事実は、ガバナンス強化や透明性向上の姿勢として好印象を与えます。
経営に一定の緊張感を持たせ、バランスを保つ役割としても、非常勤役員の存在意義は大きいと言えるでしょう。
メリット④:ガバナンス体制の強化
近年、上場企業を中心にコーポレートガバナンス・コードの遵守が求められており、その流れは未上場企業にも波及しています。
非常勤取締役や社外役員の設置は、経営の透明性や公平性を高める施策として重要視されています。例えば、経営判断に対して第三者の視点で監視や助言を行うことで、不正防止やコンプライアンス強化が期待できます。
また、意思決定プロセスに多様性を持たせることができ、社内だけでは到達し得なかった判断基準を導入することも可能です。ガバナンス体制の強化は、投資家や金融機関からの信用にもつながり、資金調達や事業提携の際にも好材料となります。
企業の信頼性を高めるための戦略的な施策として、非常勤役員の配置は効果的と言えるでしょう。
メリット⑤:人材不足の補完
慢性的な人材不足に悩む企業にとって、非常勤役員は優秀な人材を外部から取り入れる実用的な手段です。
常勤での雇用が難しい人材であっても、非常勤という形であれば業務委託に近い柔軟な形で関与してもらうことが可能です。例えば、急な事業展開や業務の専門性が求められる局面において、短期間だけ関与する形で人材を補うこともできます。
特にスタートアップや地方企業では、フルタイムの専門人材を確保するのが難しい現実があります。そのような中で、経験豊富な人材のノウハウを一部でも経営に取り込むことは、大きな戦力となり得ます。
内部人材の育成と並行して、即効性のある外部補完として非常勤役員を活用する動きは今後ますます重要性を増すでしょう。
また、非常勤役員・取締役の採用を考えている場合は、エニィクルーエージェントがおすすめ。各分野のプロ人材をスポット活用することが可能です。
非常勤役員・取締役の報酬相場
非常勤役員の報酬相場は、企業の規模や業種、業務の関与度合いによって大きく異なります。中小企業と上場企業では、支払える報酬の水準や役員に求める役割の重さが異なるため、金額にも差が生じやすい傾向があります。
一般的に、非常勤取締役の月額報酬は5万円から15万円程度が相場とされており、年額で換算すると60万円から180万円程度となる場合が多いです。
常勤役員の年収が800万円〜1,500万円を超えることもある中で、コストを抑えながらも専門性を活かせる人材を登用する手段として企業にとってメリットが大きいでしょう。
また、社外から迎える非常勤役員、特に社外取締役の場合は、ガバナンス強化や経営監視の役割を重視して報酬が高めに設定されることもあります。
例えば、上場企業では、社外取締役の報酬平均が600万円台にのぼる事例もあり、金融・製造などの業種では700万円を超えるケースも確認されています。
一方で、中小企業では財務体質や経営資源の制約から、年額100万円前後にとどまることもあります。
報酬額の決定には、業務内容・責任範囲・出席する取締役会の回数などが影響しますが、対価として「どれほどの貢献が見込まれるか」を見極めることが重要です。
報酬が高すぎれば税務上の「過大役員報酬」に該当するリスクがあり、逆に低すぎると有能な人材を確保できない懸念も生まれます。
そのため、業界ごとの相場や同規模企業の傾向を調査しながら、合理的かつ説得力のある報酬体系を整備するのが重要です。
非常勤役員・取締役とは?:まとめ
非常勤役員は、常勤のように日常業務に携わらず、特定の役割に特化して経営に関与する立場です。
コストを抑えつつ外部の知見を取り入れられる点が注目されている一方で、責任範囲の不明瞭さや関与の浅さに課題があると言われています。
報酬の相場や任命の仕方も企業によってさまざまで、導入前に理解を深めることが重要です。
自社にとって適切な役員体制を考えるうえで、非常勤役員という選択肢を知っておく価値は十分にあるでしょう。