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新規事業を前に進めるうえで、「誰を担当者にするか」「どんな体制を組むか」に迷う企業は多くあります。既存事業の評価基準や人選の感覚をそのまま当てはめると、体制が機能せずプロジェクトが停滞しやすくなります。
この記事では、新規事業の推進体制の配置パターン、担当者・責任者に求められる要件、社内に適任者がいない場合の外部人材の組み込み方までを解説します。ぜひ最後までご覧ください。
目次
1. 新規事業の体制・担当者設計が難しい理由
新規事業の推進を任されたとき、「誰を責任者にするか」「どんな体制を組むか」で迷う背景には、既存事業と根本的に異なる要件があります。
既存事業と何が違うのか
既存事業の運営は、成功パターンと手順が確立されています。担当者には「その手順を守りながら成果を出す力」が求められます。一方、新規事業では成功パターン自体が存在しません。市場に合わせて仮説を立て、検証し、素早く軌道修正する力が必要です。
既存事業で高い評価を受けている人材が、新規事業の担当者として機能するとは限らない理由がここにあります。求められる資質の種類が違うからです。
人材・ノウハウ不足が最大の壁
新事業展開を実施していない企業の最上位課題として、「必要な技術・ノウハウを持つ人材の不足」が挙げられています。2017年版中小企業白書(野村総研2016年調査)では、この課題を挙げた企業が約43.8%に達するとされています。次点の「販路開拓が難しい」(約31.2%)を大きく上回ります。
体制設計の難しさは、人材の不足だけでなく「どんな人材が必要かの定義」ができていないところにも原因があります。採用や人選の前に、まず「どういう仕事をする人が必要か」を整理しなければなりません。
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2. 新規事業の推進体制の型|配置パターンとチーム構成
体制設計で最初に決めるのは、「どこに新規事業チームを置くか」です。配置パターンによって、動けるスピード、使えるリソース、経営との距離感が変わります。
3つの配置パターン
新規事業チームの置き方には、大きく3つのパターンがあります。
1. 既存事業部の中に内包する
新規事業チームを既存の事業部の中に置くのが、もっとも取り組みやすい形です。ただし既存事業の論理(稼働優先・短期売上優先)に引っ張られやすくなります。新規と既存が同じ評価軸で見られるため、新規担当者が既存のサポート業務に引き込まれるリスクもあります。
2. 社長直轄の推進チームを置く
新規事業チームを社長直轄で置くと、経営との距離が短くなり、意思決定のスピードが上がります。リソース調達も経営判断で動かしやすいため、スピードを重視する段階に向いています。一方で、社長のリソースと関心に依存するため、社長が多忙になると案件が止まりやすくなります。
3. 独立した組織・分社として設計する
新規事業を独立した組織や分社として設計すると、既存事業の制度・評価・文化から切り離せるため、新規事業に合った動き方が設計しやすくなります。ただし、設立・運営のコストがかかり、親会社とのリソース調整も必要になります。事業がある程度固まったフェーズ以降に検討するのが一般的です。
どのパターンが適切かは、事業ステージと経営者のコミットメントの深さによって変わります。初期段階では社長直轄、事業が立ち上がり始めてから分離する流れをとる企業が多くあります。
チーム構成と規模感
新規事業の初期チームには、一般に3つの機能が必要とされます。「戦略立案・意思決定」「顧客接点・仮説検証」「最小限の実装・オペレーション設計」の3機能です。この3機能をカバーできる人数を確保するのが基本で、3〜6名程度の少数精鋭が初期には現実的な規模とされます。大人数を集めると意思決定が遅くなり、検証サイクルも回りにくくなります。
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3. 担当者・責任者に求められる要件と人選
体制の配置パターンを決めたら、次は「誰を置くか」です。担当者・責任者の選び方を誤ると、どれだけ体制の型を整えても機能しません。
責任者に必要な3つの要件
新規事業の責任者に求められる要件は、次の3つです。
1. 事業推進力と戦略立案力
新規事業の責任者には、白地から事業をかたちにしていく事業推進力と、勝ち筋を描く戦略立案力が求められます。前例やマニュアルのある既存事業とは異なり、正解のない状況で仮説を立て、限られた情報から素早く意思決定していく力が問われます。
一方で、こうしたスキルを社内で十分に備えた人材は限られます。求められるスキルと、実際に担当できる人材が持つスキルとのあいだにギャップが生じやすい領域だからこそ、責任者の選定は慎重におこなう必要があります。
2. 合意形成・社内調整力
新規事業は既存事業と利害が対立することがあります。予算・人員・情報を既存部門から調達する場面では、丁寧な調整が欠かせません。「新規事業の担当者は尖った戦略家がよい」と考えがちですが、社内を動かす調整力も同様に重要です。
3. 不確実性への耐性
仮説が外れたり、軌道修正が必要になることは、新規事業では通常の状態です。「前例がない状況でも前に進める」「失敗を学習に変える」という思考スタイルが、責任者の大前提になります。既存事業の評価基準(短期売上・目標達成率)だけで人選すると、この要件を見落としやすくなります。
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4. 専任か兼務か|兼務が体制を止める理由と折衷案
新規事業の担当者を「専任にすべきか、兼務でよいか」という問いは、体制設計の中でもっとも意見が分かれやすいテーマです。予算やリソースの制約から、初期は兼務でスタートせざるを得ないケースが多いのも実情です。
兼務が体制を止める3つの要因
兼務体制が新規事業を停滞させる要因は、次の3つに整理できます。
1. 既存業務が常に優先される
兼務担当者にとって、既存業務は「今すぐ成果を求められる」タスクです。一方、新規事業は中長期的な取り組みであり、短期的な成果が出にくい性質があります。忙しい時期になるほど、新規事業の時間が最初に削られます。週に数時間しか割けない状態が続くと、検証サイクルが遅くなり、他のプレイヤーとの差が広がります。
2. 判断のスイッチコストが積み上がる
新規事業の仮説検証には、継続的な思考の集中が必要です。会議と会議の合間に30分だけ新規事業に取り組むような状態では、前回の文脈を思い出すことに時間を使い、実質的な思考時間が極端に短くなります。タスクの切り替え自体がコストになるからです。
3. 利益相反が生まれる
担当者が既存事業にも責任を持っていると、「新規事業が既存の顧客や市場と競合しそうなとき」「新規事業のために既存のリソースを使いたいとき」に、自分の中で判断が歪む可能性があります。これは担当者の意識の問題ではなく、構造的に起きやすい問題です。
専任化が難しい場合の折衷案
完全な専任化が難しい段階では、次の2点を体制に組み込むことで、兼務の弊害を一定程度抑えられます。
1. 新規事業の時間を「確保」ではなく「ブロック」する
毎週特定の曜日・時間帯を新規事業専用にロックし、他の業務のスケジュールから除外します。「空いたら取り組む」という状態を作らない運用が要になります。予定に組み込んでおくことで、忙しい時期でも新規事業の検証サイクルが止まりにくくなります。
2. 評価を既存事業と切り分ける
兼務担当者が「新規事業を頑張るほど既存の評価が下がる」状況になると、新規事業に使う時間へのモチベーションが失われます。新規事業の貢献は別軸で評価する設計を、体制設計の時点から組み込んでおきます。売上が立つ前の探索段階でも、進捗を正当に評価できる仕組みが必要です。
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5. 責任者の権限と評価・撤退基準を体制に組み込む
体制設計でよく見落とされるのが、「誰が意思決定権を持つか」と「どう評価し、いつ撤退を判断するか」の設計です。どちらも最初から体制の中に組み込んでおくことが、後になって機能不全に陥るのを防ぎます。
責任者への権限移譲
新規事業の現場では、素早い意思決定が競争優位になります。市場調査の結果を受けてターゲットを変える、パートナーとの交渉をその場で進めるといった判断が、逐一上位承認を必要とする体制では実行できません。
一般に、意思決定権の所在を明確にし、事業責任者が一定範囲内で判断できる権限を持つことが体制設計の要件とされています。ただし、権限移譲はリスク管理と表裏一体です。「この範囲以上は経営判断とする」という上限ラインもあわせて設計しておきましょう。
既存事業の物差しで測ってはいけない
新規事業の担当者を既存事業の評価基準(売上達成率・粗利)で測ると、事業が育つ前に担当者の評価が下がり続けます。これは担当者のモチベーション低下だけでなく、「成功しそうにないプロジェクトへのリソース集中を避ける」という合理的な行動を組織に生じさせます。
新規事業の評価軸として有効なのは、探索プロセスの質(仮説検証の数、顧客インタビューの数、学習の深さ)です。売上が出ていない段階でも、次のフェーズに進むために必要な検証ができているかを評価しましょう。
撤退基準を「はじめから」設計する
撤退基準のない新規事業は、明確な理由なく継続されやすくなります。多くの企業では撤退の判断基準が曖昧なまま事業が進み、見直すべきタイミングを逃しがちです。
撤退基準は「いつまでに何を達成できなければ見直す」という形で、体制設計の段階で経営と合意しておきます。担当者が事業継続に感情移入してから撤退を議論すると、判断が遅れ、投資損失が大きくなります。
「撤退=失敗」ではなく「撤退基準の合意=新規事業への投資効率の設計」と位置づけることで、現場は機動的に動けるようになります。
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6. 社内に適任者がいないとき|外部人材の体制への組み込み方
「責任者の要件は理解できたが、社内にそれを満たす人材がいない」という状況は、多くの企業で起きています。採用で解決しようとしても、新規事業の推進経験がある人材の採用は時間がかかります。
外部プロ人材の活用
新規事業の推進では、社内人材だけでなく、外部のプロ人材(フリーランス・副業人材)を活用する企業が増えています。とくに、社内で不足しやすい戦略立案や事業推進といった領域を、経験豊富な外部人材で補うケースが見られます。
外部人材の活用は、すでに多くの企業にとって体制設計の選択肢の一つになっています。
推進担当と社内カウンターパートの並走設計
外部人材を体制に組み込む場合、役割設計が重要です。外部の推進担当者だけを配置して「あとはお任せ」にすると、外部人材が抜けた後に知見が残りません。
有効な設計は、外部の推進担当者と社内のカウンターパートを1名ずつ並走させるパターンです。
- 外部の推進担当: 市場調査・顧客インタビュー・事業仮説の構築・初期の事業計画を担う。経験と実行力を持ち込む役割
- 社内のカウンターパート(社内オーナー): 社内調整・意思決定の窓口・学習の受け手を担う。外部人材との並走を通じて、ノウハウと判断軸を社内に蓄積させる役割
この2者が定期的に情報共有する仕組みを体制に組み込むことで、外部委託の成果が社内資産に変わります。外部人材が抜けた後に「事業の経緯が誰にもわからない」という状況を防ぎます。
内製化に向けた段階設計
外部人材の活用は、内製化への橋渡しとして位置づけると整理しやすくなります。
最初のフェーズでは外部主導で仮説検証を回し、社内カウンターパートが学習します。次のフェーズでは社内が主役になり、外部が補助に回ります。最終的には社内主導で運営できる状態を目指します。この段階設計を最初に合意しておくと、外部への依存が固定化するリスクを抑えられます。
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まとめ
新規事業の体制と担当者設計は、配置パターン・チーム構成・人選・専任か兼務か・権限と評価・撤退基準まで、事業の中身と同じくらい成否を左右します。固定的な正解はなく、事業フェーズと社内リソースに応じて設計を変えることが前提です。
そして体制設計で最後に突き当たるのが、「設計はできても、それを推進できる人材が社内にいない」という現実です。専任化が難しい、経験者を採る時間がないという場合は、推進担当を外部のプロ人材で組み込み、社内のカウンターパートと並走させることで、知見を社内に残しながら事業を前に進められます。まずはどこを外部で補えるかを検討してみてください。
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