社外CFOインタビュー:金融機関での経験を活かした幅広い財務ソリューションで大企業から創業直後のスタートアップまでを幅広く支援(伊藤一彦様)

外部人材活用

この記事のインタビュー対象者

本インタビュー記事と日本パートナーCFO協会について

この記事は社外CFO活用の意義や社外CFO活用による事業成長のポイントについてご紹介する目的で、一般社団法人日本パートナーCFO協会の協力のもと、その協会メンバーの皆様にインタビューを行い執筆をしております。

日本パートナーCFO協会は、中小ベンチャー企業での社外No.2、パートナーCFO®を広く一般に普及することを目的として、パートナーCFOの認定事業やパートナーCFO人材育成事業などを行っています。

社外CFOインタビュー

これまでのキャリアについてお聞かせください

大学卒業後、今はみずほ銀行になっている日本興業銀行に入り、法人融資を中心に活動していました。主に地方鉄道や通信・運輸会社などのインフラ系企業、地方の中堅製造業などが多く、設備投資資金の融資に特徴がある金融機関でした。バブル崩壊後は新しい成長分野に融資しようという動きがあり、その中で私も、広告制作会社やテレビCMの会社などに対する人材獲得資金やコンテンツ開発資金の融資などにも取組むようになりました。

その後、リース会社に2年ほど出向し、ADSLやイーサネット、当時としては新興通信の携帯などに対するインフラのファイナンスリースに取組みました。新興の企業様との接点が多かったので、みずほキャピタルというみずほグループのベンチャーキャピタルの方と連携して帯同訪問するようなこともありました。そうした活動を通じて、ベンチャーキャピタルのビジネスモデルに魅力を感じ、公募人事に応募した結果、みずほキャピタルに異動できることになりました。

以降19年間みずほキャピタルに在籍していたのですが、投資だけでなく、スタートアップファンドの設立・運営や、事業会社のオープンイノベーションという切り口でのCVC設立、事業会社から受け入れたキャピタリストの育成など、スタートアップ周りの業務に幅広く取組みました。

このように社会人になった当初はインフラ系の重厚長大型の産業とのお付き合いが多かったのですが、後半からはどちらかというと新興の通信会社やスタートアップを支援しています。フェーズは違いますが、いずれも成長志向の法人がお客様だった影響なのかもしれませんが、今もそうした成長資金の調達のご支援を中心に取組んでいます。

その後、どういった経緯で独立をされたのでしょうか?

もともと中小企業診断士の資格を取得した時点で独立したいと考え、副業が解禁されるタイミングを見計らって着々と準備を進めていました。そうした経緯で、解禁と同時に直ちに申請して、会社を設立しました。設立直後に、コロナが拡大しコンサルタントとしての対面業務は行いにくくなりましたが、政府がコロナ対策で補助金メニューを拡充したため、中小企業診断士という立場で、 補助金支援を中心に取組む好機でした。またコロナ禍でも、成長意欲の高い企業はありましたので、企業が銀行融資を獲得していくための事業計画作りの支援などにも並行して取組みました。

ただ副業ですと、業務時間が土日か平日夜に限定されるため、なかなかクライアントの都合が合わず顧客獲得面で限界を感じました。契約形態もどうしてもスポット型が多かったです。
将来的に安定して継続的な支援ができる事業形態を目指すにはどうしたらいいのかと思っていた時に、ちょうど高森厚太郎さん(日本パートナーCFO協会理事)の『中小・ベンチャー企業CFOの教科書』を拝読し、パートナーCFO養成塾を終了したら独立しようと決めました。ちょうど昨年末に修了し、今はみずほキャピタルを退職し、コンサルタントとして独立し、事業を始めました。

今現在はどのようなクライアントさまのご支援をされているのでしょうか。

まず、IPO準備中の会社が3社あり、そこのIPO準備を支援しています。

1つはAIやDXなどの先端分野の人材育成や人材紹介をしている会社の監査役をやっております。監査役という立場ですが、私が就任した当時はまだ内部統制専担の人材がいなかったため、内部統制整備やIPOの準備に関与しつつ監査役としての業務を行っていました。

2つ目は店舗型のビジネスをしているIPO準備企業です。同社はVCなど外部株主が複数社出資している企業です。私は財務顧問という形でご支援しています。委員会設置会社ではありませんがガバナンス強化のために委員会をつくっており、その委員をやったり、財務に軸足を置いた形で幹部社員育成研修などを行っております。

3つ目は物流のDX企業です。プラットフォームを開発・運営しているので、そこの人材獲得や開発のためのファイナンスを中心に社外CFOという形で支援をしています。昨年は事業会社から億単位のファイナンスの支援に取組み、VCからのファイナンスも現在進行形でお手伝いしています。ファイナンス時の株主間契約や投資契約の締結手続きだけでなく株価算定や資本政策のブラッシュアップなども含めてご支援させて頂いています。

IPO準備中の企業の内部統制強化や資金調達以外にはどのような支援をされているのでしょうか?例えばIPOとはまだ距離があるようなスタートアップや中小企業の支援もされているのでしょうか?

成長志向のスタートアップや中小企業支援も行っています。1つは製造業のスタートアップ企業ですが、お話を頂いた時は初回の決算も終えていない状態で、製品もまだ試作品しかなく、PMFをどうやって目指していくのかというフェーズところでした。事業計画も定性的なものしかなかったので、その定性的な事業計画をお伺いしながら、定量的な数字が入った計画にしていくというところからお手伝いを始めました。

製品を開発するだけでなく、量産化もしなくてはいけないので資金調達が必要だったのですが、VCからのエクイティでの調達が難しかったため、公庫からの融資と、区の制度融資を活用したファイナンスを行い、新製品の販売を始めました。そのような創業支援に近いケースもあります。

VCからエクイティでの調達ではなく、公庫や制度融資を使うというのは、どういう場合が多いのでしょうか。

やはりIPOに向けてのストーリーが明確であれば、エクイティでの調達が比較的候補に上がりやすいです。ただ、スタートアップであってもなかなかIPOに向けてのシナリオが明確に描けないような場合は、デットの調達の方が適していると思います。

IPOを目指せるような規模になるのかというところもありますが、経営者自身が明確にIPOに向けて事業計画を描いているのかというのもあります。まずは堅実に固めていきたいというような意向ですと、その段階でエクイティで集めても投資家と経営者の意向がどこかですれ違ってきてしまいます。その場合はやはりデットで、その後場合によってはエクイティだろうという判断をします。

単に成長していくだけですと、エクイティで調達をしてもエグジットがないので、投資家としてはやはり投資できません。イグジットシナリオが明確になるかどうかというところが、エクイティにできるのか、それともデットの方がいいのかという分岐点になると思います。

デットの場合は、ものすごく成長率が高くなくても、調達はできるとは思います。むしろ、金融機関が融資期間内に回収できるような事業計画になっているのかということが審査のポイントになります。そういう意味では、事業計画を精緻に作ってストレスシナリオであってもちゃんとお金が期限内に戻りますよというようなものを金融機関に提出しないと、特に未決算や赤字決算の場合には、なかなか審査は通りにくいとは思います。

まだ決算もしたことないような段階で、蓋然性のある事業計画を出すのはなかなか難しいように思います。

はい。だからこそ、専門家の支援で事業計画を説得力ある内容にしていくことが必要なんだと思います。
事業者だけで作成しても、未決算の段階で金融機関から数千万円を借りるのは厳しいかもしれません。立ち上げ期は事業が繁忙なだけでなく人材不足なので、 金融機関向けの資料作りになかなか時間がさけないと思います

管理面にも強いCEOもいるとは思いますが、能力が高くても、事業面に専念したいという面があるので、まさに社外CFOがお手伝いできるような分野じゃないかなという風に思います。

事業計画の精度を高めるために具体的にはどのようなアプローチを取られるのでしょうか?

投資家や金融機関など計画を見る方が納得できる情報をしっかりと計画の中に入れていくことが重要だと思います。

例えば、売上計画であれば単価 x 数量という話になるので、類似した製品の単価などをもとに計画上の単価を設定します。類似品がどのぐらい売れていそうなのかというのも、調べればある程度わかるところもあるので、そういったところから積み上げ式で数値を作ります。

一方、積み上げ式だけでなく、調査会社や中央省庁が出している統計から獲得可能な市場規模がどれくらいあるのかという市場全体からのアプローチでも見ていきます。

このような形で作成すると、未決算の会社であっても金融機関に納得していただけるのではないかと思います。融資だけでなく補助金も同じで、特にものづくり補助金など革新性や新規性が評価されるような計画を作る際には、今申し上げたようなところは共通した計画作りのアプローチになります

融資での資金調達が難しいような企業の支援もされているのでしょうか。

伝統的な工芸品を作られている企業の支援もしています。高級ホテルなどを主な顧客としていたので、コロナ禍で業績が行き詰まってしまい、資金繰りをなんとかして欲しいとのご相談があり、ご支援させて頂くことになりました。

エクイティやデット、補助金なども検討したのですが、ハードルが高いことが分かったので、まず財務改善に着手することにしました。売掛金の回収サイトを短縮して所要運転資金を圧縮するという財務の基本に立ち返って、契約条件を見直して前受金を活用して資金繰りを楽にするなど、契約面も含めたサポートを実施しました。何より、受注獲得が必要なので、国内市場に伝統的な商品を提供することに依存していた事業形態を見直し、海外の販路開拓のための営業斡旋や、伝統的商品だけでなくアニメや現代アートなどをモチーフにした新商品の開発などを後押しして売上を回復することにより、間接的に財務も改善していくようなご支援をしています。

資金調達ができない場合は、営業面や契約面にも踏み込んだご支援しながら財務を改善していくことも重要だと考えています。

それ以外に強みとされているご支援内容などはありますでしょうか?

オープンイノベーションにより新規事業開発を目指している大企業のご支援にも取組んでいます。VC在籍中、CVCやCVCファンドを設立支援したり、設立後の投資の意思決定の機関設計や社内規程の整備、さらにはCVCに勤務予定の方を育成する研修の実施まで取り組んでいましたので、上場企業が新規事業をやるためにCVCを作ろう、合弁会社作ろうといったお話をする時に、その合弁会社の目的にあった法人の形態のご提案や、設立後に会社運営を軌道に乗せるまでのプロジェクトマネジメントもお手伝いさせて頂いたりしています。

社外CFOとの、上手な付き合い方のポイントがあればお聞かせください。

一言で言うと、CEOが片手間ではできない専門性の高い分野を任せるということだと思います。初めにCEOの方とお話しした時に、どの分野を社外CFOである伊藤に任せるのかというところをちゃんとすり合わせして、専門性の高い分野に特化して任せて頂くことがポイントだと思います。

社外CFOは毎日出勤しているわけではなくて、およそ月3〜4日程度です。たまに財務を委託しているのだからと、会計ツールのIDを渡して、「勘定科目の入力におかしな点がないか見てほしい」というようなご依頼があることもあります。勿論、できないことはないのですが、それは、財務や経理の事務を担当する方に任せた方が低コストで済みます。むしろ事業計画作りやそのブラッシュアップ、 株価算定や資本政策の見直しなど、経営に関わる重要なテーマを任せないと時間もお金も無駄になってしまうと思います。

経営面や事業面の課題を専門性の高い財務手法でどのように解決しようかというところを一緒に考えさせていただくのが、企業側から見た上手な付き合い方の1番のポイントだと思います。

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この記事の監修者

伊藤一彦

アナタの財務部長合同会社代表社員・中小企業診断士 神奈川県横須賀市出身1991年  東京大学経済学部卒業。日本興業銀行、みずほキャピタルで計30年間、法人のデットとエクイティ両面で資金調達支援に従事。2020年「アナタの財務部長合同会社」を設立。現在、IPO準備会社3社、成長志向の中小企業5社の経営支援に取り組む。

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