社外CFOインタビュー:財務を中心とした経営企画代行的な支援で経営のPDCAを推進

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社外CFOインタビュー:財務を中心とした経営企画代行的な支援で経営のPDCAを推進(清水謙伍様)

この記事のインタビュー対象者

本インタビュー記事と日本パートナーCFO協会について

この記事は社外CFO活用の意義や社外CFO活用による事業成長のポイントについてご紹介する目的で、一般社団法人日本パートナーCFO協会の協力のもと、その協会メンバーの皆様にインタビューを行い執筆をしております。

日本パートナーCFO協会は、中小ベンチャー企業での社外No.2、パートナーCFO®を広く一般に普及することを目的として、パートナーCFOの認定事業やパートナーCFO人材育成事業などを行っています。

社外CFOインタビュー

改めて自己紹介としてこれまでのキャリアを教えていただいてもよろしいでしょうか。

東京理科大学出身で卒業後は建設機械メーカーで生産管理の仕事をしていました。生産管理の中でも経営から直接降りてくる生産管理なので、月何台生産するかとか、それによって在庫どれぐらい持つかという経営の視点に近いものでした。また、購買、営業、生産、開発といった全体の最適解を見つけていくような会議があるのですが、その事務局運営などもしていたので、企業の全体最適のようなテーマには非常に興味がありました。それもあって中小企業診断士の資格を取得しました。

30歳の頃には事業会社にいるよりも独立して開業したいと思うようになり、コンサル企業に転職しました。 そのコンサル企業は、地方の中小企業向けに上司と2人でチームを組んでコンサルをするというスタイルの会社で、そこで財務と人事育成を中心としたコンサルを3年半経験して、独立開業しました。その後パートナーCFO養成塾も受講しています。

元々香川が出身で、中小企業診断士協会も香川に所属していることもあり、独立した際に香川の案件を何件か引き受けさせて頂き、販路が開拓できました。今は東京と香川のクライアントを半々ぐらい支援させて頂いています。

クライアントの規模や業種などに特徴はありますでしょうか。またどのような支援のスタイルを取られていますでしょうか。

業種は比較的製造業や製造サービス業のような業種の支援が多いですが、あまり特定の業種に特化はしていません。事業のライフサイクルについても、 創業期を超えて成長期のクライアントもいますし、成熟期のクライアントや、衰退期を迎えて赤字になっているのをどうするかという案件もあるので、どのフェーズの企業様もいる形です。

私の支援のスタイルとしては、クライアント企業の社長が3年後、5年後、10年後に目指す姿から逆算した時に、この1年、3年でこういうことをして、ここの位置付けには行きたいという理想を具体化し、その実現に向けて必要な支援をしていくというスタイルをとっています。これは1人会社であろうが、従業員が5人でも30人でも、あまり差がないように思います。ただ、売上が5〜10億円など超えているような企業では、社長がその必要性を理解しているので、すでに手を打っていることが多いです。

その意味で、売上が3〜5億円ぐらいで、それまで社長が1人で頑張ってきたけれども、限界を迎えつつあり、チームの組織力で勝負しないといけないフェーズに入っているところで、財務の部分で支援をするという形が多いです。社長の経営視点での壁打ち相手をしつつ、それを財務や数値に落とし込んだり、金融機関とどういう関係性を築いて、長期の戦略を実現させるかといったところの支援をさせて頂いています。

毎月経営者と1〜2時間打ち合わせをするようにしていて、その1〜2時間は経営の第2領域的な話ができて、PDCAが回る状態を作るようにしています。そこで方向性のすり合わせができれば、日常の行動の中でもそこに向かった動きが取れるようになります。それが習慣になり、行動の質が上がって、行動の質が上がれば、成果が上がりやすくなるのではないかと考えています。

具体的にどのような支援をされてるのか例を挙げて教えていただけますでしょうか。

私が独立した頃に出会った企業様で、今7期目のクライアントがいます。私が出会ったのが法人化して3期目ぐらいだったのですが、売上がまだその時は1億円未満でした。2期連続赤字で、コロナで売上も落ちていたので、再生計画を作ってほしいという相談と、事業再構築補助金で設備投資をして、ビジネスモデル変えてほしいという2つの相談をいただきました。

まずはヒアリングをして、色々な設備投資の案が出たのですが、社長とディスカッションして1番既存事業とのシナジーが高そうな設備投資を選んで、補助金をとりました。

同時に、案件ごとにどれぐらいの粗利が出ているか把握しきれていなかったので、それを把握しつつ、損益分岐点分析をしました。今の固定費を踏まえると、これぐらい利益がないと返済もできないというラインと必要な粗利率を決めて、それを下回らないように意識して受注を取っていくようにしました。毎月何件受注を取って、それぞれ粗利が何割ずつで、 デッドラインを超えたか超えてないかというのを毎月チェックするというのを1年間やり続け、その年で黒字化ができました。

2年目は、それをやりつつ、プラスで毎週もう1時間程度の時間を使って、中長期でどういう戦略を描いてるかをお聞きしながら、具体化していきました。中長期の戦略をお聞きする中で、設備投資計画が決まってきたので、それを実現するための資金調達のために金融機関に相談しつつ補助金も使って、その設備投資も実現させました。

結果、ご支援をはじめて3年目で大幅に黒字が出て、売上も数億に届きました。次は10億円を目指していきたいということだったので、10億円を目指すために何をしないといけないかを逆算して、まず組織作りをしようという話を進めています。しばらくは今までのように売上が一気に伸びることは見込めないので、その間にしっかりとナンバーツーを育てて、そのナンバーツーの下のリーダー層育成や組織図の整備を提案しています。

普段のコミュニケーションやミーティングをどう設計していくか、営業、生産、総務、人事、財務など、それぞれの組織で何をしていくかというところを、毎月毎月少しずつ具体化している状況です。おそらくどこかのタイミングで、人が育つ人事制度、人事評価制度も入れていかなくてはいけないと考えています。

マーケティングや営業で収益を伸ばすという考え方は多くの企業様が持たれていると思いますが、この事例のように財務で事業を伸ばすというアプローチは考えられていない企業様も多いのではないかと思います。

業種との相性があって、財務が戦略的に効果を発揮する業種と、マーケティングをしっかりやれば伸びる業種があるのではないかと考えています。

例えば鉄工所やオーダーメイドでソフトウェア開発をしているような企業は、ある案件は粗利5%だったが、他の案件では粗利50%というようなことがありえます。その意味で、原価管理や粗利管理を徹底的にやらないと収益につながらない場合があります。逆に、マッサージやコンサル業などは粗利イコール売上高のような構造なので、売上をあげることが収益につながります。そのため、マーケティングの方が重要という考え方になると思います。

資金調達の支援もされているかと思いますが、その辺りの事例もあればお話いただけますでしょうか。

ある地方の卸売業の会社様の事例で、当初の売上高は数億円程度だったのですが、営業利益が数千万円の大幅な赤字で、債務超過は1,000万円近くまで発生していました。

一方で、キャッシュフローは改善傾向だったことに加え、卸売業なので在庫を十分に仕入れるための運転資金さえあれば、収益は上げられる状態でした。そこで、資本性劣後ローンを入れようという話になりました。

通常の融資では、例えば、2,000万円の借り入れで5年返済となると、2,000万を60ヶ月で割って毎月返済していきます。一方の、資本性劣後ローンでは5年間一切返済をする必要はなく、5年後に一気に2,000万円を返済するという仕組みです。その間、その2,000万円は資本になります。

先ほどの事例ではこの資本性劣後ローンを用いたことによって、債務超過が相殺されて、銀行の格付け上は資産超過に変わりました。それによって民間の金融機関からも追加の資金調達ができて、その資金を元手に在庫を増やして売上を大幅に拡大することができました。

資本性劣後ローンで調達した資金の使い道としては、それを元手に高確率で収益が上がるような用途でなくてはいけません。例えば製造業で設備投資をして、今まで10個しか作れなかったのが100個になり、作れば作るほど売れるという状態であれば資本性劣後ローンは向いていると思います。その意味でご説明をした卸売業のケースは資金勝負のような状態にはなっていたので、資本性劣後ローンでの資金調達は相性が良かったなと思います。

他に清水様のご支援で特徴的な部分などあれば教えていただけますでしょうか。

色々な人とタイアップしながら仕事をするのは得意かなと思います。

例えば、マーケティング・販促コンサルの方から依頼を受けて、クライアントのマーケティング視点での事業コンセプトを設計してもらった上で、それを補助金の申請書に盛り込むような支援をしたことがあります。同様に、ITコンサルの方からシステムの概要や要件を作ってもらった上で、それを補助金や融資のための書類、経営計画に盛り込むというケースもあります。そのようにすることで、資金調達後の計画もしっかりとできているので実際に調達した後の事業成長にもつながりやすくなります。

また経営者と話す中で、人事評価制度が必要と判断をしたら、外部の人事コンサルに依頼したりもします。重要なポイントだけは絶対外さないようにしつつ、全体のコーディネートをしていくというのが理想的だなと考えています。その意味では、経営企画代行のような位置付けかと思っています

最後に社外CFOとの上手な付き合い方、社外CFO活用のポイントがあれば教えて頂けますでしょうか。

税理士の先生に仕事を依頼する際も一緒だと思っています。税理士報酬を買い叩いて、税理士の先生に記帳代行や申告を全部依頼している方もいらっしゃいますが、税理士の方がその状況で採算を合わせようとすると、記帳はパートタイムの方に任せて、年に1回1時間だけ決算の時に話をする程度になってしまいます。結果、クライアント側は「提案がない」「全部受け身で聞いたことしか答えてくれない」と感じるようになります。

逆に賢い活用方法は、記帳代行の指導をしてもらった上で、記帳代行業務を巻き取ります。そうすると税理士の方はチェックだけで済むようになります。結果、空いた時間で1年後の着地や2〜3年後着地を想定した節税対策や今のうちに行うべき仕掛けを考えてきてもらうことができます。税務の視点での設計や知恵を使った仕事に本来価値があるはずで、そこに力を発揮してもらえるようになります。

社外CFOに依頼をするときも同様で、全体設計や知恵を使う部分に時間を使ってもらえるように、きちんと整えられるかどうかが勝負かなと思います

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この記事の監修者

清水謙伍

清水ビジネスパートナー株式会社 代表 東京理科大学理工学部卒業後、香川県の建設機械メーカーに入社。生産管理業務に従事。2014年、中小企業診断士資格取得。2017年より東京のコンサルティングファームで事業再生や資金調達などのコンサルティング実務の経験を積み、2021年に独立。地方の中小企業向けの経営企画サービスにおいては創業期から成熟期まであらゆる局面において数値と資金調達をベースに網羅的な支援を行っている。

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